〜自然が肌を愛してくれているかのように、清々しい清潔さと潤いを与える天然のクレイ〜
ガスールの故郷は、モロッコの東部の冷涼な街、ミデルト近郊のモワヤン・アトラスとオート・アトラスの2つの山脈が出会う谷あいにあります。ガスールはジュラ紀にここにあった湖に、二つのアトラス山脈からの堆積物や水が集まり、それらに含まれていたミネラル類が地殻変動と長い年月によって変化しできたと考えられています。実際それを証明するかのように、ガスールの鉱山では貝類の化石や硅素、雪花石膏の結晶も数多く産出します。
鉱物学的に見るとガスールは、モンモリロナイトの一種スティーブンサイトという鉱物の仲間です。その性質はとても独特で、水を含むとクリーム状に膨らみ、ほぼ中性でありながら、油分を乳化し、たんぱく質などの汚れを吸着する、石鹸やクレンジング剤のような働きをします。
幸運にもモロッコにはこの稀有な性質を持つクレイの広大な鉱脈があり、 古くからその洗浄力は人々に親しまれてきました。
人々のハマムでの入浴の場で、シャンプー、全身洗浄、パックなど、心地よく洗い清めるものとして用いられたのです。 もちろん女性の美容にも欠くべからざる素材となり、女性たちは家族が使うガスールや自らの肌や髪を磨くより効果的なレシピを競いました。
また、その有用さ・貴重さから、ガスールは、近代まで市場ではお金のようにパンや日用品を買うのに使えたと言います。ガスールの鉱山で初めて出会った最長老の坑夫はその頃のことを懐かしそうに教えてくれました。
「ガスール」という呼び名が、アラビア語の洗い清めるを意味する「ラサラ」に由来していることからも、モロッコの人々とこのクレイの関わりの深さが、現れているようです。