ミツバチが人にもたらす素晴らしい贈り物といえば、まず蜂蜜が思い浮かびますが、ミツロウもまたミツバチからの多才な格別の贈り物です。ミツロウは、ミツバチの巣に含まれるワックスで、働き蜂の腹部にある蝋腺から分泌され、巣を作る時に用いられます。
その性質はとても多様です。
たとえば、肌を健やかに保つ脂溶性ビタミン類やミツバチが集める花粉に由来するミネラル類、心を穏やかにする芳香成分を多く含みます。また可塑性に富み、変質しにくくかつ殺菌効果もあるため、これで包んだものや、またミツロウ自体に混ぜたオイルや香料の品質を長持ちさせます。そのような多様な性質ゆえ、世界各地で昔から、ロウソク、ロープや布の防水、水漏れの修理の材料、鋳型作り、革や家具の光沢剤、塗料、肌の乾燥防止、食用など、ミツロウは生活のさまざまな場面で活用されてきました。
このようなミツバチの恵みと人の関わりは、ハネムーンの語源が蜂蜜酒に由来したり、エフェソスの地母神像に数多くの蜜蜂が彫られていたり、また教会で灯されるろうそくがミツロウで作られたものであるといった例からもわかるように、西欧ではオリーブオイルと同じく豊穣や神聖さの象徴となったほどに、歴史あるものです。
それは、ミツバチの種の数が世界中で最も多いアジア圏でも同様です。
eavamが拠点とするタイでは、ミツロウは古くからお菓子の香りづけに使われたり、ロウソクに利用されるなど、日常で広く使われてきました。森に住む動物たちに仏陀が説法をした時、猿がミツバチの巣を仏陀に捧げたという古い物語があり、それにちなんで寺院にミツロウやミツロウ製のロウソクが今も奉納され、市場ではそのためのミツロウが売られています。アジアでもミツロウは、長く人の生活の中で大切にされ、今も特別な素材であり続けています。